久しぶりのメッセージをいたします。
日本人の個人レベルの良識と関係者の方々の身を粉にした尽力により、パンデミックは何とか大爆発にまでは至らず、過去１年強がすぎてきたと、米国より敬意をもって拝見しています。
しかし、その日本でも多くの命が失われ、多くの方が体に困難を抱えておられます。私が管理者として働いているジョンズホプキンスの医学部門では、米国出身者への影響もあるものの、特に海外から米国に勉強にまた仕事に来られている方々にとても影響があり、コロナによって突然ご両親を同時に失われた方など、枚挙にいとまがありません。医療人としては、まずは人々の命と生活、ということだけを考えたいと、つくづく考える日々です。
東京では第５波が始まっており、オリンピック期間中にこれまで以上の感染大爆発が起こると言われている、と聞いたのですが、それは正しい事実認識ですか？米国におりますと日本の事情はどうしても間接的にしか聞けません。非常にシニカルな言い方をすれば、米国にいると日本の事情はよくわからない、そして米国には、日本の人々の命と生活について真剣に考えてくれる人は非常に少ない、ほとんどいない、ということです。オリンピック開催は本当に日本の人々にとって歓迎されることですか？諸外国の反応など日本在住の方々は全く無視されて、自分たちのこと「だけ」をしっかり考えてほしいと思います。所詮米国でもその他の国でも、本当に日本の人々の命と生活について考える立場にはないからです。
僕は、個人的にはとても心配しています。私の仕事の仲間や友人たち何名かが家族をこの春、コロナ感染症で失いました。その痛みを直接的にみてきた私が言えることは、日本に在住の人々がボトムアップに、日本の人々の命と生活について「のみ」を考えて、オリンピック開催の是非を結論してほしいということです。こうした是非はトップダウンのみで決定が行われた場合は不正義です。大地から大きく広がる樹々のしなやかさと強さ、日本国民にはこうした良識と強い正義があるのだ、と僕は信じます。まだ日本国籍を有する海外在住者として、今回のオリンピックの開催の是非の議論が、正義にかなったものであり、その結果として良き結論が出ることを心から願っています。
