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医学生は、「医学とはサイエンスとアートの融合であり、それらを融合できてこそ良き臨床、患者診療ができる」と教えられます。これは、人間が世界を認識する際に少なくとも2つの主要な論理によってそれが行われるとする根本的な考え方を反映するものに思われます。


2つの論理とは“empirical”、“empathic”です。前者は現在の多くの科学、特に実証主義的な自然科学の原理であり、証明(validate)が論理の原則です。後者に対する日本語訳はなかなか適切なものがありません(共感という言葉が当てられることもあるようですが、これは不正確です)。Empathicの根本には、科学的実証が直接できなくとも、人間には相互理解をする能力が本質的に備わっており、それを用いて物事を説明していくことができるとする前提があります。これは、実証主義の科学における証明に対して、理解(understand)が論理の原則となり、たとえば歴史の把握などにおいて用いられています。医学は自然科学の一学問でありながらも、人間をダイレクトに扱う特徴ゆえ、単に自然科学のempiricalの論理のみならず、empathicの論理を必要とし、それら両方のバランスが重要です。


精神医学は、医学のなかにあってempiricalな論理による学問的体系の組み立てを比較的困難としてきた分野でした。客観的な分子病理診断を可能とするバイオマーカーはまだ確立していません。薬物治療は必須ですが、病態機構を踏まえた上で科学的に導きだされた薬物ではなく、過去の偶然の臨床的発見(serendipity)に頼ったものに過ぎません。したがって、この分野では、今後empiricalな論理を強化するような科学的研究が非常に重要です。膨大な客観的情報を統計的に処理していくコンピューターサイエンスが人気の時代においては、それらの活用も期待されるところです。それらは、最先端の医学が目指す「precision medicine」にもつながるでしょう。こうした実証主義的な自然科学をいかに精神医学に広げるかは、この分野の重要課題ですし、本講座の1つのゴールでもあります。


一方、いかにempiricalな側面が強化されても、精神科の臨床において最大の問題となる、患者さんが精神障害に陥り困窮し、症状を示す「意味」を捉え、説明することは必ずしも容易ではありません。臨床の現場では、この「意味」の把握なしに正しい治療方針を決定できないことが多いです。しかし、この「意味」の把握においてはどうしてもempathicな論理が必要です。では、empiricalとempathicな論理はどのように関係しあって、実際の病態把握を行うべきか、臨床につなげるべきか、こうした問題は精神医学には避けて通れませんし、これに答えることも本講座の1つのゴールです。精神医学を通して、上記の2つのゴールに答えていくことは、ともすれば昨今empiricalな論理が強調されすぎで、医学本来のサイエンスとアートの融合が見失われがちな医学全体に対して、バランスある物事の考え方、自然科学の活用法を示唆できる可能性も持っていると期待しています。


こうした考え方、ゴールに立って、京都大学内の他の関連教室ならびに、私が米国において主宰するジョンズホプキンス大学精神医学講座、疾患センターを有効に活用しながら、教育、研究、臨床紹介、社会連携を展開していきます。もし本教室で少し学んでみたいということがありましたら、ぜひご連絡をください。それぞれの方々に合ったプランを個人レベルで立てていければと思っています。具体的には、それぞれのページもご覧いただき、どのような始めの1歩を我々が歩もうとしているのかをご覧ください。少なくとも2ヶ月に1度は「教授からのメッセージ」を今後お届けしていきたいと思っていますので、それらもご参照ください。皆様にこうした考え方に興味を持っていただき、もし機会あるなら一緒に学び、働き、そして私が皆様のプロフェッショナルなキャリアのお手伝いができればと願っています。

澤明

お問合せ、ご意見などありましたら、当講座アドレス 060fip@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp にお寄せください。いただいたメールは教室スタッフで目を通し、担当者よりお返事いたします。ジョンズホプキンス大学宛てへのメールは日本語対応は難しいため、上記アドレスにてお願いします

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