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私の日本での活動2024年(その2)

私の日本での活動について、主要な4つのうち、(1)学生の方の指導、交流、(2)学術会合、シンポジウムについて、前回ご紹介しました。今日はその2として(3)日本語での出版、並びに(4)研究についてご紹介します。

 

出版

ジョンズホプキンスの本を翻訳することを主にしています。私のもとで勉強してくださった日本出身の精神医学関連の先生方との共同作業の結果です。

 

2019年に刊行された『マクヒュー/スラヴニー 現代精神医学』(みすず書房)は、ジョンズホプキンス大学病院の精神神経医学領域での中心的考え方を紹介した教科書の邦訳です。その内容を実際の臨床現場に即したかたちでまとめた書の邦訳が、今年刊行されたばかりの『システマティック臨床精神医学』(中外医学社)です。「読者への手引き」をぜひご覧ください。これは出版社からもオープンリンクになるとのことです。

 

現代は「プレシージョンメディスン」の時代とされ、多くの医学医療領域がこの考え方を通して大きく発展していますが、精神神経医学領域ではこれが立ち遅れています。そのためには、生物医学的な研究、脳科学を徹底的に推し進めることがこのためには必須であることは多くが認めるところである一方で、「今」の患者さんに対して何をもって精神医学が貢献できるか、の点において、『マクヒュー/スラヴニー 現代精神医学』ならびに『システマティック臨床精神医学』がお伝えするメッセージは大事であると考えています。先ほどのべた「読者への手引き」などを通してそれを理解いただけるようであれば幸いです。

 

また、昨年刊行の『サイコロジカル・ファーストエイド』(金剛出版)は、ジョンズホプキンス大学公衆衛生学校にて講義をする研究者が書いた本です。災害など、さまざまな緊急事態の際の急性期の心身反応に対して我々は何ができるか?大変大事な問題であり、これを精神科医だけに限るのでなく、多くの人々で力を合わせて何がシステマティックにできるのか、というガイドを持つためには有意義な本だと思います。1月の能登半島地震に際しては、出版社のご厚意で、関係者を対象に無償電子データ提供が行われました。もしそれを通して多くの方がこの本を活用してくださったのなら、著者一同として大変嬉しいことです。

 

最後に、前回ご紹介した日本医療政策機構との共同主催シンポジウムについて、毎回「臨床精神医学」誌にて特集を組んでいただいてまとめをご報告させていただいております。これら(2021年9月号2023年12月号)についてもぜひご覧ください。

                                                                                                                                      

研究

私の専門領域は狭く定義するなら、臨床精神医学と分子神経医学の接点にあります。そしてこの側面で、多くの日本の先生方とも共同研究をしています。2名の大学院生の方々もこの視点からのプロジェクトに取り組んでおられます。一方で、私は精神医学、神経科学に対して、良き連携をもってより広い領域でも活動するようにしています。したがって今日は、櫻井武教授がリードしてくださるデジタル認知科学のプロジェクトのご紹介をします。本講座はこのプロジェクトをサポートしており、もし本研究に興味をもたれたうえで大学院希望の方は、ぜひ弊講座あてにお知らせください。

 

デジタルテクノロジーがいろいろな社会の側面で活用される時代になりました。これは精神医学、メンタルヘルス領域しかり。本プロジェクトに対しては、誰もがこの簡単なゲームアプリを通して継続的に自身の認知状態をモニタできるようになることを期待しています。すなわち、最初のゴールは医学的応用というより、社会メンタルヘルス一般への外挿です。その後の発展形もあるのでしょうが、まずはこの側面での地盤を固めたいと思っています。このプロジェクトについては今後何度もアップデートをしたり、その分野の発展についてお伝えしていけると思っています。アメリカの精神科医にとっての最大の学術集会(日本の精神神経学会に相当するもの)であるAmerican Psychiatric Association (APA)の委員をしており、年会のプログラムなり多数の仕事もあるのですが、そのうちの1つはテクノロジー委員会の委員です。ここではまさに、デジタルテクノロジーがいかに精神医学、メンタルヘルス領域で生かされるべきなのかを、米国の最先端として話し合っています。これらについてもご紹介する機会が今後あると思います。

(追記)

今日の写真は、滞在先から東京駅の写真をとったものです。世界の人が驚く大都市、東京、という感じですね。 




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