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日本医療政策機構 (HGPI) 主催の専門家会合にての基調講演2025

  • 澤 明
  • 3月5日
  • 読了時間: 3分

更新日:3月5日

2025年1月に日本に行ったことは先日のメッセージに書きました。

最初の仕事は、1月22日に日本医療政策機構 (HGPI) 主催の専門家会合「個別化精神医療の実現に向けて求められるイノベーション」にて基調講演をすることでした。この会合はオンラインも一部含むハイブリッド方式にて全体で200−300名の方が来てくださったもので、個別化精神医療の実現に向けて必要な取り組みのあり方を検討することを目的としていました。


日本語の個別化精神医療とは、英語のprecision medicine in psychiatryもしくはprecision psychiatryという言葉の翻訳と思われますが、私の仕事はそのpsychiatry(精神医学)を論理的な意味で、neuropsychiatric disordersもしくはbrain disordersと広げて、その臨床、研究をすることにあります。したがって、長年の連携関係がある日本医療政策機構 (HGPI)から基調講演で呼んでいただいたことは嬉しく、特に私が医師の初期時代に上級医として一緒に仕事をさせていただいた(正しくは、一方的にご指導を賜った)恩師のお一人である国立精神・神経医療研究センター理事長でおられる中込和幸先生(基調講演)とご一緒できたことは光栄の限りでした。

 

ここで、precision medicine in psychiatryとはなんですか、とお尋ねになりたい読者の方もおられると思います。これを理解していくためには、

 

1)  reliabilityを強調し、validityを割愛せざるを得ない形で、それでも一度は成立させないといけなかった精神科診断基準のDSMの歴史的背景と功罪。


2)  精神医療分野では、バイオマーカーなど客観的評価指標がないことにより、reliabilityとvalidityの乖離が激しく、それが他の医学分野とは異なる問題点を、少なくとも現時点では引き起こしていること。


3)  このような課題を受け、近年、DSMに基づき精神疾患を分類する「カテゴリカルアプローチ」から、患者さんを多角的かつ深く理解する「ディメンショナルアプローチ」へのパラダイムシフトが求められていること。


4)「ディメンショナルアプローチ」は、データサイエンスの範囲を超えて、何が患者さん(一人の人間)にとって必要なのかを考える「理解」が求められていること。


5)  precision medicine in psychiatryの発展を加速するには、アカデミアだけでなく、企業、当事者、家族、支援者など、多様なステークホルダーの有機的な連携が不可欠であること。

などのポイントを押さえていく必要があります。これらについては、今年の一つ一つのメッセージの中でも触れていきますし、日本でprecision medicine in psychiatryを論理的に記述する書籍が不足することから、日本語で本を書いてみたらどうか、という話も湧き上がっております。これまで私は日本語で書籍を出したのは、英語の本の翻訳に限られていましたので、大丈夫かなという思いと同時に、ぜひやってみようかな、とも思っております。その節はどうぞご指導の程、よろしくお願いいたします。

 

今日の写真は、冬の浅間山。僕が学生時代の競技スキー部であった時にこの辺りは何度も通り、この優雅な姿にいつも感激してきました。日本滞在時に、北陸新幹線からその姿を撮ることができました。おそらく信濃追分、御代田を過ぎたあたりだったと思います。 参照リンク 会合のご紹介:2025年1月 HGPI 専門家会合についてのレポート

Precision medicineについて書いた書籍1:『精神科治療学』

Precision medicineについて書いた書籍を含む過去の出版:過去の出版ページ


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